いただきます、いただきます、いただきます (さわやかな夜、人々が家の前のお外で、テーブルを囲み、楽しそうに夕食を食べておりました) (その様子を、離れて一人、悲しそうに見ている女がおります) (女は空を見上げ、ため息をつくと、うなだれて、その場から去って行きました) (人気のない広場まで来ると、女は、美しい満月の神様を見上げて言いました) 嗚呼、神様、わたくしは 生きとし生けるものを殺し、食べ 熟してしまったこの身体、この乳房 動物やお魚は、共に生きる仲間ではありませんか 草や木や、穀物だって、生きているのではありませんか わたくしはもう決して、食べませぬ こんな罪深い人生から、出て行きます (女は、何も食べなくなりました。食べなくなれば、自然の理、やせ細り、弱って行きます) (そして最後に、女は、月の神様に手を伸ばし) 嗚呼、神様 (と言って、死んで行きました) (これを見ていた、周りの人は) 何て立派な女だろう それに比べて俺たちは 何て穢れているのだろう、嗚呼 (やがてみんなが、月の神様に誓います) (国の人たちは、一人、また一人と、満足気に死んで行きます) 食べませぬ、食べませぬ、食べませぬ (そして、残るは最後の一人。人間は、終に罪を許されて、) (約束された、清らかな地に降り立ったのです) (月の神様に手を伸ばし、最後の一人は言いました) 嗚呼、神様、あなたの元へ参ります (満月に輝く月の神様は、端から端までの、大きな口を開けて、) (舌をべろりとなめずって、こう、おっしゃいました) ごちそうさま