[00:00.000] 作词 : 少女病
[00:00.047] 作曲 : ピクセルビー
[00:00.94]Double Cast
[00:02.52]Lyrics:少女病
[00:04.02]Compose&Arrange:ピクセルビー
[00:05.94]Vocal:Mitsuki&Lico
[00:08.93]Voices:丹下桜,Mitsuki
[00:11.51]
[00:13.78]そこは王都の大劇場 夜毎描かれる至高の舞台
[00:21.02]歌声に乗せて奏でられる物語
[00:28.05]表現者は誰もが目指す その場所を、その確固たる聖域を
[00:35.40]神に選ばれた若きヒロイン二人【Double Cast】
[00:42.14]
[00:42.43]背が小さくて地味 けれど、歌い出すと表情が一変する少女(フィー)
[00:55.73]華やかな嬌艶な 舞台に立つために生まれてきたようなもう一人の少女(リィサ)
[01:07.14]同じ場所を目指しお互いを高め合ってきた親友 二人は信頼しあっていた
[01:16.78]けれど周囲は囁き合う
[01:21.48]「真にヒロインに相応しいのは?」嫌でも耳に飛び込んでくる雑音(ノイズ)
[01:30.57]
[01:30.96]私なんて、と自虐的なフィー
[01:35.61]どうしても自信が持てずにいて
[01:40.33]それを聞いて怒りだすリィサ
[01:45.00]けれどもどこか悲しそうで
[01:49.37]珍しくケンカ別れのように 二人は離れ家路についた
[01:58.77]
[02:01.60]『少女は翌日、そのショックの影響からか、熱を出して寝込んでしまう。
[02:07.06]幸いな事に、そういう時のためのダブルキャスト。
[02:11.33]予定とはちがうものの、その日はリィサが舞台にあがることになった。
[02:16.05]
[02:17.08]舞台のクライマックス。ヒロインの見せ場である独唱。
[02:21.56]老朽化した照明が運悪く、その頭上に落下して……。
[02:25.66]静かに聞き入っていた観客は、眼前に降り注ぐ惨劇に悲鳴をあげていた』
[02:31.58]
[02:32.39]素足のままで 熱にふらつきながらも
[02:37.35]親友の元へと走り出す少女
[02:42.02]いつもは優しい仲間達 誰も目を合わせてはくれない
[02:51.18]膨張する不安 抑えきれない恐怖
[02:55.90]けれど意を決して辿りついた病室
[03:00.86]そこにあったのは 傷ひとつないような 綺麗な横顔
[03:08.97]
[03:09.69]「ひどいわ、みんなで私を驚かせようにして。
[03:19.13]本当にびっくりしたわ……。大したことはなかったのね!」
[03:28.40]
[03:31.80]『安心した反動ではしゃぐ少女に、医師である老婆は言い辛そうに語る。
[03:38.21]目立った傷はみえないけれど、頭部にあたったせいで意識が戻らないということ。
[03:44.75]ただ運が悪かったと。医学ではどうしようもない。
[03:49.43]魔女の力でも借りればあるいは……と非現実的な慰めをかけさえして。
[03:56.65]少女は親友に覆いかぶさり、狼狽して泣き叫んでいた』
[04:01.41]
[04:06.90]美しい<<声>>が<<音>>が 今は悲しくかすれて
[04:15.96]私のせいで、と苦悩して塞ぎこんだ────
[04:25.42]
[04:34.72]泣いても喚いても朝は訪れる 舞台に上がろうとするフィー
[04:48.89]けれど体震えはとまらず何度やっても どうしても、どうしても
[04:59.47]歌を歌うことができない……
[05:02.77]
[05:02.99]仲間達は責もせず少女を庇い 誰もが雇い主へと嘆願してくれた
[05:18.23]演目の変更を 穴は我らが埋める、と
[05:25.37]理解ある貴族は慈悲深くも首を縦にふった
[05:35.51]それだけではない
[05:39.28]片翼をなくし傷心のヒロインに しばしの休息を
[05:49.74]彼女はその日から演者ではなく 皆を陰から支える仕事に回った
[06:03.76]
[06:05.04]『1日たりとも見舞いに訪れない日はなかった。
[06:08.96]けれど、その顔を見るたびに、少しずつ。
[06:12.69]ほんの少しづつ、親友がやつれていくのを感じていて。
[06:17.41]あるいは、少女自身も同じような生気を失っているのかもしれない。
[06:24.68]数年の月日が流れて。
[06:27.27]すっかり舞台上から離れ、小間使いとして日々を過ごす少女。
[06:32.78]ある夜、休憩をとぼんやり椅子に腰かけていると、
[06:37.02]舞台から突然歌声が聞こえてきた。
[06:41.50]舞台上には、あの頃のままの親友の姿。
[06:45.86]彼女は美しく歌いながら、少女を舞台に引っ張り上げる。
[06:50.87]その続きを歌うように無言の視線で促されるけれど、
[06:55.86]やはり歌声はでなかった。』
[06:57.93]
[06:58.90]「ねぇ、歌ってよ。私の好きな、あなたの声色で」
[07:04.66]
[07:07.22]邪気のない笑顔 何も変わらず 誘われるように唇を動かす
[07:21.23]あの頃と同じよう歌えている 声が出る
[07:28.73]心が覚えている 体が歓喜している
[07:36.32]
[07:36.50]コーラスを紡ぎゆくリィサ
[07:40.29]ようやく思いだした 彼女が思い出させてくれた/【笑って?ほらね、やっと気付いた?】
[07:49.93]
[07:50.29]私は【あなたは】歌うことが好きだ!
[07:57.32]
[07:57.64]いつだって 横に立って 時に争いながらも
[08:06.78]ah... 寄り添いあって歌ってきた ダブルキャスト
[08:15.53]重なる声 今、繋がる感情
[08:21.04]二人に距離なんてなかったね
[08:24.99]誰よりお互い 認め合っていたから
[08:30.65]キミのah... 歌を【あなたの声を】
[08:35.22]
[08:36.15]『演目の一番の見せ場である独唱に差し掛かる。
[08:39.91]親友は口を閉ざし、真剣な顔で少女を促す。
[08:44.88]戸惑いながらも滑らかに歌いあげる少女』
[08:48.47]
[08:49.91]「なんで忘れていたんだろう。
[08:52.58]歌うことって、こんなにも素晴らしいことだった……!」
[08:56.21]
[08:57.24]「この舞台のヒロインはやっぱりあなたね」
[09:00.26]
[09:01.18]「何を言ってるの。ダブルキャスト。二人がヒロイン、でしょう?」
[09:06.98]
[09:08.07]「ありがとう。でも、私はもういかなきゃ……」
[09:12.60]
[09:13.92]「あなたに出会えてよかった。歌い続けて、ずっと────」
[09:24.57]
[09:25.26]その言葉を残してリィサは 姿を消した
[09:33.50]混乱しながら つまづきながらも
[09:38.20]彼女が眠っていたはずのベッドへと駆ける
[09:43.37]けれど、辿りついたその時には 既に親友は息を引き取っていて……
[09:53.70]
[09:55.04]いつだって横に立って いつまでも競いあって
[10:04.27]ずっと二人で歌っていける そう思ってた……
[10:13.14]
[10:18.13]『空に響くように、フィー。どうか歌い続けて────』
[10:31.98]
[10:35.26]『彼女が心臓の鼓動を止めたのは、ちょうど最後に
[10:38.98]言葉を交わしたはずの瞬間で。
[10:42.79]親友は、死の間際まで少女のことを想っていた。
[10:47.93]責任という重い十字架を背負い、歌えなくなった少女を』
[10:52.59]
[10:53.64]「歌い続けて、ずっと……」
[10:56.26]
[10:57.94]『その親友の笑顔を胸に、少女は再び舞台に立つ。
[11:04.12]比類なき歌声は、遠い国まで。そして、
[11:09.62]彼女がいるはずの空の果てまで響きわたっていた……』
[11:13.33]終わり